更年期女性において、不眠はよく見られる症状の一つです。良質で、深い睡眠は、メンタルヘルスとパフォーマンスを高め、快適な生活を送る上で重要です。そのために必要な睡眠時間は人それぞれ異なりますが、平均的な成人では約6 ~ 8 時間と言われています。
更年期女性における不眠の割合と傾向は?
東京歯科大学市川総合病院の更年期外来(秋桜外来)受診女性の初診時のアンケートでは、約66%が何らかの睡眠障害を訴えている*1
閉経移行期以降に入眠障害や中途覚醒の増加が見られる
睡眠不足は気分に影響を与え、よりネガティブな思考をする傾向にあり、不安を生じやすい*2
更年期の不眠の発生原因は?
ほてりと寝汗
寝汗は閉経周辺期に始まり、閉経後数年間持続します。それに付随して起こるほてりは夜間に強 く感じると、寝汗とともに睡眠を妨げる原因になります。
メンタルヘルス
エストロゲンのレベルが低下すると、セロトニンなどの気分に影響を与えるホルモンや神経伝達物質の調節がうまくいかなくなり、うつ病のリスクが高まります。また、うつ病に合併する症状として最も多いものは不眠と血管運動神経症状(ホットフラッシュなど)と言われています。
夜間排尿
エストロゲンのレベルが低下すると、泌尿生殖器系の症状として腟・外陰部の乾燥や不快感に加え、尿意を非常に強く感じ、夜間にトイレに行く回数が増えてきます。
その他の睡眠障害
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS):睡眠時の呼吸障害は、閉経前には女性より男性に高いですが、周閉経期からは女性も増加すると言われています。
むずむず脚症候群(RLS):男性より女性に多く、年齢と共に有症率は増加します。鉄欠乏性貧血でも起こることがあり、カフェインの摂取や抗うつ薬の内服も原因となる場合があります。
睡眠障害の治療方法
睡眠衛生
規則正しい生活(食事と運動)を基本とし、就寝前の飲酒、カフェイン、喫煙を避けたり、就床環境を整える(遮光カーテンの使用や温度調整)ことも必要です。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法は薬物療法と併用が可能です。上手く睡眠とれない状態の原因に対し、認知や行動の癖があれば修正しようとする治療法です。欧州のガイドラインでは、慢性の不眠症にはCBTが治療の第一選択肢とされています。
ホルモン補充療法(HRT)
HRTも治療法の選択肢となります。「ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版」では、不眠に対するHRTが「有効である。推奨レベル:2(弱い推奨)」とされています。また、HRTにより全身が整うことで不眠も和らぐという2次的効果も期待できるでしょう。
漢方薬
不眠症状の内容に応じて加味逍遙散、酸棗仁湯、抑肝散、加味帰脾湯が主に用いられます。効果が現れるまでには、やや時間を要することがあります。
睡眠薬
「睡眠薬の適切な使用と休薬のための診療ガイドライン」には、「更年期障害に伴う不眠に対しては非ベンゾジアゼピン系睡眠薬であるエスゾピクロン、ゾルピデムが推奨されます。長期服薬時の治療効果と安全性についてはエビデンスに乏しく、慎重に処方する」と記載があります。
サプリメント
マグネシウム、カルシウム、ビタミン D、5-HTP (メラトニンの前駆体) など、睡眠不足に関連する栄養素の欠乏を防ぐのに役立ちます。
*1:「女性更年期 外来診療マニュアル〜TDCメソッド」髙松 潔、小川真里子 編著 日本医事新報社
*2:Krause AJ, Simon EB, Mander BA, Greer SM, Saletin JM, Goldstein-Piekarski AN, Walker MP. The sleep-deprived human brain. Nat Rev Neurosci. 2017
監修者:江藤亜矢子(日本更年期と加齢のヘルスケア学会 理事)
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