普段何気なく過ごしている中で、「ふと気になる香り」がありますよね。
私たちが感じている香りは、ふと気になるといったことや、何かを思い出すといったような感情や記憶などをはじめとして、心や身体にどのように影響しているのでしょうか?
香りは私たちが嗅覚で感じる「感覚」とされ、実際に多くの女性が生活の中で香りを取り入れている「アロマセラピー=芳香療法」から、心と身体への香りの働きを一緒に読み解いていきましょう。
まず、アロマセラピーで活用する精油の香り=天然香料は、植物の生体内で生合成された100%天然の揮発性物質です。そのため、その香りは植物そのものに感じる鮮度や特性があり、決して全てのものが心地よい香りと感じられるとは限りません。そのため、アロマセラピーとして香りを活用する上では、単品そのものの香りだけでなく、どのような素材と鮮度を持つ精油の香りが、どのようにブレンド(料理)されるか?によっても、心地良さや嗜好性が変化します。
このような感覚は、私たちが普段食事や飲み物などを口にしながら、鼻から抜ける香りを感じている感覚ととても類似した体験となります。そのため、野菜や果物がスーパーや農家で違うように、精油の香りもそれぞれのメーカーや農家によって大きくその香りの質や印象が異なり、そこから印象=感じ方に違いが生じます。このように同じラベンダー、同じオレンジの名前が付いている瓶でも、その中身の鮮度や香りの質には違いがあるということです。
私たちはこの「感じる」感覚によっても、心や身体への働きや捉え方が変化しますので、「香り」と言ってもその働きは1つではなく、私たちの本能的な感覚を反映する興味深い働きとして注目されています。

精油の働きとその機能性に関しては、大きく分けて3つに分けることができます。
1. 嗅覚(鼻)から脳へ届くルート
精油の香り(芳香分子)は、鼻から入って鼻腔にある嗅上皮という粘膜を通り、嗅細胞の先端にある嗅毛にある嗅覚受容体でキャッチされ、嗅球へと送られ神経に伝達されることで大脳辺縁系(主に感情などをコントロールする扁桃体や、記憶に関わる海馬)に達します。
さらに、自律神経やホルモンバランス(内分泌系)を支配する視床下部へと伝達されます。

2. 皮膚を通して届く経皮吸収ルート
精油は非常に小さな分子構造を持ち、皮膚の表皮や皮脂膜を通過して微量ではありますが、血管に入ります。そして全身をめぐる血流によって運ばれます。
3. 呼吸を通して肺へと運ばれるルート
吸気と共に取り入れられた精油の香り(芳香分子)は、気管支を通って肺に入り、肺胞によって交換されます。ここから微量ではありますが血流に入り、全身を巡ります。
あくまで、使用する年齢や環境、体調や時間、活用方法などによってその働きは変化し、全ての人に対して同じ働きや同じ容量が血流中に認められるということではないため、予防や健康をテーマとして、心地良いと感じない「香り」には感覚的に決して我慢せず、それぞれに合った有効活用を考えることが大切です。

執筆者:アネルズ あづさ
医学博士
株式会社
Blue ink代表取締役
グローバルオーガニックフォーミュレーター
プロフェッショナルアロマセラピスト
日本産科婦人科学会会員
日本女性心身医学会会員
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